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芸能人の自死から考えるメンタルヘルス不調への対応

知識が豊富な専門家や引く手あまたの著名な医師でも、悩む人の苦しみや不安は、本人にしかわかり得ないことだと思う。しかしそう理解していても、身近な家族や恋人なら、死を考えるほど苦しんでいる辛い気持ちには気づいてあげることができる(気づいてもらえる)だろうという想いは、このところ続いている芸能人の自死を通して見事に崩された。

そもそも自ら死を選ぶ状況とは、「孤立」や「生き地獄」など死んだ方がマシだと思う状況を連想するのであって、家族も友人も周りにいて仕事もあるというのとは、相容れない。昨年12月に亡くなった神田沙也加さん、今月になって渡辺浩之さん、上島竜兵さんについて、報道されるたびにそう感じた。それだけ、自死の理由は複雑に絡み合っているのだと、あらためて思う。

メンタルヘルスの問題には、大きく3段階のレベルがある。1つは、いろいろな心理的・身体的ストレスが加わると誰にでも起こるストレス反応で、食欲が減ったり気分が落込んだりするような一時的な状態である。2つめは、ある特定の内容や人との関係に上手く適応できず心身の症状が出てそれが生活に支障をきたすが、そのストレスがなくなれば症状もなくなるという状態。この2つが「心のレベルの症状」である一方、3つめは「脳のレベルの症状」であり、脳の調整機能にまで影響をきたすうつ病や精神疾患である。脳のレベルになってしまったら、“心理的支援”や“環境調整”だけではだめで医療につなげなければならない。家庭でも職場でも、この知識を持ち支援者が適切な対応をすることが求められるのである。

参考出典「管理職なら知っておくべきメンタルヘルス」渡辺洋一郎著

はたして前出の3人は、どのレベルにいたのだろうか?この選択が、本人の努力や頑張りだけではどうすることもできない症状によるものであったとしたら、回避できた可能性もあったかもしれない。

真因は本人にしかわからないのである。

HRデータラボ
公認心理師 山本久美

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